
WBSの作り方|手順どおりでも1行目が書けない人へ
WBSの作り方は4ステップで説明されていますが、詰まるのは手順の外側です。一番上が担当と期限をつけられる形になっていない、割る基準を作業量だけで決めている、先まで全部割ろうとしている。3つのつまずきと直し方をまとめました。
新しい案件の作業を書き出そうとして、表を開いた。1行目に案件名だけ打って、そのまま閉じた。
やることは頭に入っている。入っているのに、行に落とすと急に嘘っぽくなる。「要件をまとめる」と書いてみて、これは1日なのか3日なのか分からず、消した。次に開いたのは1週間後だった。
WBSの作り方は、すでにていねいに説明されています。成果物を洗い出し、作業に割り、階層にして、担当と日程をつける。手順としては、そのとおりです。
それでも1行目で止まるなら、詰まっているのは手順ではありません。
WBSとは、何をするものなのか
WBS(Work Breakdown Structure・作業分解構成図)とは、そのまま渡されても誰も動けない大きさの仕事を、担当と期限をつけられる大きさまで割っていく作業のことです。
大事なのは「きれいな図を作ること」ではなく、割った先の1つひとつに、名前と日付を入れられるかどうかです。入れられないなら、まだ割り足りません。
どれが自分に近いでしょうか。
- 何から書けばいいか分からず、案件名だけ書いて閉じた
- 割ってはみたが、どれも「これ何日かかるの」と聞かれると答えられない
- 先の分まで全部並べたのに、上から順に終わっていない
つまずき1:一番上が、担当と期限をつけられる形になっていない
いちばん多いのがこれです。割れないのは分解が下手だからではなく、割る前の一番上が曖昧だからです。
たとえば「今期のKPIを達成する」は、上に置いても割れません。会社から示された数字をどう達成すればいいか分からず、タスクにできないまま一人で抱え、期末まで誰にも相談できずに終わった人がいました。相談できなかったのは性格の問題ではありません。何を手伝ってほしいのかを言葉にできないから、相談の単位が作れなかったのです。
このとき、AIに聞いても答えは返ってきます。ただ、返ってくるのは考え方の整理で、「何を・どの順番で・いつまでに」の形にはなりません。読んで納得して、シートは白いままです。
直し方:一番上に書くのは目標ではなく、終わった状態の1文です。「今期のKPIを達成する」ではなく「3月末までに、新規の問い合わせが月20件入る状態にする」。
見分け方:その1文を読んだ人が、終わったかどうかをその場で判定できるか。判定できないなら、まだ目標のままです。
つまずき2:割る基準を、作業量だけで決めている
「1つのタスクは1日以内の大きさに」と、よく言われます。目安としては正しいのですが、量だけで割ると、いちばん危ないものが見えません。
危ないのは、割った先の中に他の人の手が入る工程が隠れているときです。
粒度の大きいタスクをそのまま持っていて、期限の直前に着手した人がいました。取りかかってみると、その中に「Xさんに確認」という工程が入っていました。その日、Xさんは休みでした。自分の手を動かす時間は残っていたのに、確認が取れないまま期限を過ぎました。
自分の作業が何時間かかるかは、遅れても取り返せます。他の人の予定は取り返せません。だから、割るときに最初に探すのは「何時間か」ではなく「途中で誰かに渡す場所があるか」です。
直し方:割った行を上から読んで、「渡す」「もらう」「聞く」「見てもらう」が入っている行に印をつけます。その行は、そこで2つに切ります。前半(自分の作業)と、後半(相手の返事を待つ時間)です。
見分け方:印のついた行に、相手の名前が書いてあるか。「関係者に確認」のままなら、まだ誰も動けません。
つまずき3:先の分まで、全部割り切ろうとしている
最後まで割り切ってから始めよう、とすると、たいてい途中で力尽きます。仮に並べ切れたとしても、今度は別の問題が出ます。
毎月の決まった作業を、何か月分もまとめて先に作っていた人がいました。結果として、終わっていない行が常に何十も並ぶ状態になり、「終わらないのが普通」という感覚ができてしまいました。そうなると、本当に急ぎの行が混ざっていても目に入りません。並べたこと自体が、リストの信用を落としたわけです。
直し方:細かく割るのは、これから2週間で手をつける範囲までにします。その先は「設計」「テスト」くらいの粗い行のまま置いておき、近づいたら割ります。
見分け方:いま並んでいる行のうち、今週その行を開く人がいるか。誰も開かない行が半分以上なら、割りすぎです。
今週できること:2段で切って、行に名前と日付を入れる
2段より下は、着手する週になってからで間に合います。
1段目:終わった状態の1文を書く
終わった状態の1文は、読んだ人がその場で「終わった」と判定できる形にします(つまずき1の直し方)。ここが決まると、2段目は自然に出てきます。決まらないうちに下を書き始めると、あとで全部やり直しになります。
2段目:人が変わるところで切る
自分だけで終わる仕事と、誰かに渡す仕事を分けます。目安は「1つの行を、1人が最初から最後まで持てるか」。持てないなら、渡す場所で切ります。
そのうえで:それぞれの行に、名前と日付を入れる
日付は、作業が終わる日ではなく、次の人に渡す日を書きます。渡す日が入っていると、遅れがその場で分かります。終わる日だけだと、渡し忘れたまま数日過ぎます。
名前と日付が入ったら、そこで止めてください。
割った行を並べる表が要る方は、担当・期限・「いま誰が持っているか」の列が入ったExcelテンプレートを用意しています。
それでも残るもの
ここまでの手順は、頭では分かっていても続きません。理由ははっきりしていて、割った行を1つずつ手で登録するのが、単純に面倒だからです。1回の分解で20行、30行になれば、その入力だけで午前中が終わります。
この部分は、私たちが提供するサービスで任せられます。期日と終わった状態を渡せば、そこから必要な作業を割り出して、順番をつけて並べるところまでできます。カレンダーの予定を見て、空いている時間に振り分けることもできます(使える範囲はご契約と設定によって変わります)。
割ったあとの「相手の返事待ち」を見張って、返事がなければもう一度声をかけるところも引き受けられます。つまずき2で切り出した、いちばん取り返しのつかない部分です。
とはいえ、終わった状態の1文だけは自分で決める必要があります。そこは代わりに決められません。
よくある質問
Q. WBSとガントチャートは、どう違いますか。
WBSは仕事を割ったもの、ガントチャートは割ったものを時間軸に並べたものです。順番としてはWBSが先で、割れていないまま横棒を引くと、あとで棒の中身が変わって引き直しになります。
Q. どこまで細かく割れば正解ですか。
その行に名前と日付を入れられたら、そこで止めて大丈夫です。行数の目安(何時間・何人日)から入ると、割ること自体が目的になります。判定は「誰が」「いつまでに」が書けるかどうかだけで足ります。
まとめ
WBSが作れないのは、手順を知らないからではありません。
一番上が曖昧なまま下を書こうとしているか、量だけを見て割っているか、先まで割りすぎているか、たいていこの3つのどれかです。一番上を終わった状態の1文で決めて、人が変わるところで切って、それぞれの行に名前と日付を入れる。それだけで、翌日から人に渡せる形になります。
大きい仕事が大きいまま止まりやすい方は、タスク管理が上手い人の締切の引き方も合わせて読んでみてください。そもそも何を管理するのかはタスク管理の考え方にまとめています。
明日やること
一番上を決める
- 終わった状態の1文を書く(判定できる形にする)
- その1文を、関係者の誰か1人に読んでもらう
割る
- 自分だけで終わる仕事と、誰かに渡す仕事を分ける
- 「渡す」「もらう」「聞く」「見てもらう」が入っている行に印をつけて、そこで切る
- 印をつけた行に、相手の名前を入れる
止める
- 細かく割るのは、これから2週間で手をつける範囲までにする
- それぞれの行に、次の人に渡す日を入れる
白いシートの1行目には、作業名ではなく、終わった状態の1文を書いてください。
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