
タスク管理とは?ツールの前に知る、仕事がまわる考え方
タスク管理とは、抱えている仕事を書き出して、1回で終わる大きさに分け、次に動く人を決めて、終わりまで見届けることです。アプリを選ぶ前に押さえたい3つの基本と、100年前から伝わる「明日やることを6つ書く」やり方を、会話形式で解説します。
「タスク管理、ちゃんとしてね」と言われて、素直にアプリを入れた。
最初の週はまじめに書いた。次の週は開く回数が減った。3週目、リストは期限切れの赤で埋まり、それを見るのが嫌でアプリごと閉じた。悪いのは自分の性格でも、アプリでもない。たぶん、順番だ。ツールより先に、教わっていないことがある。
この記事は、タスク管理をいちばん最初から学ぶための入口です。ツールの比較は出てきません。紙とペンだけで、今日から始められます。
案内役として、100年前の二人に手伝ってもらいます。それから、いっしょに学ぶ新米社員がひとり。
タスク管理とは何か
タスク管理とは、やるべき仕事をぜんぶ見えるところに出し、動ける大きさに割り、いま誰の手元にあるかをはっきりさせて、終わるまで運ぶ技術です。記憶力の補助ではありません。「やる」と言ったことが、ちゃんと終わる状態を作るための仕組みです。
ここで大事なのは、タスク管理がまず考え方の話だという点です。ツールの使い方は、そのあとに来ます。考え方さえ身につけば紙でも回りますし、考え方がないままでは、どんな高機能なアプリを入れても3週間で赤いリストができあがります。
案内役はこの3人(ガント先生・アイビー先生・ゆあ)
ヘンリー・ガント(1861-1919)は、仕事の予定と実績を横棒で見えるようにした「ガントチャート」の考案者です。100年経ったいまも、世界中の工事現場やソフトウェア開発で毎日使われています。
アイビー・リー(1877-1934)は、経営者たちにある習慣を教えたことで知られます。「毎日、仕事を終える前に、明日やるべきことを6つだけ書き出しなさい。重要な順に並べ、翌朝は1番から順に手をつけなさい」。この助言に大金が支払われた、という逸話が伝わっています。このメディアの名前「TASK6」は、この6行のメモから取りました。
全体を見わたす係のガントと、今日の6行から始める係のアイビー。タスク管理の話は、だいたいこの二人の間のどこかにあります。
そしてもうひとり、新米社員の「ゆあ」が一緒に学びます。つまずきやすいところで、先に手を挙げてくれる係です。

ガント先生
全体を見わたす係。ガントチャートの考案者

アイビー先生
「明日やる6つ」を教えた実行の係

ゆあ
入社1年目の新米社員。今日も書類の山と格闘中
ガント先生「私は工場の仕事を横棒の図にした人間だが、図はあくまで結果でね。先に決めるべきは、何を・どの順で・誰がやるかだ」
アイビー先生「私はもっと単純です。明日やることを6つ書く。それだけで人は変わります」
ゆあ「よろしくお願いします。じつは私も、リストを赤くしてアプリを閉じた側です」
なぜタスク管理が必要なのか
頭の中だけで仕事を覚えておくことに、限界があるからです。人の記憶は、締め切りが近いものより、直近に言われたものを優先します。だから「先週頼まれた大事な仕事」より「さっき届いたチャット」が先に手をつけられ、大事なほうが静かに沈んでいきます。
もうひとつ、見落とされがちな理由があります。タスク管理は、自分を守るためのものでもあるということです。
私たちの実例台帳に、こんな話があります。ある職場で、上司がメンバーの仕事を把握するためにタスク管理ツールが導入されました。ところが使う本人は、自分のためにどう使えばいいのかを教わらないままでした。ツールはただのメモ帳になり、その人は思うように仕事を回せず、体調を崩すところまで追い込まれました。
ツールはあったのに、考え方が渡されなかった。管理「される」ためのタスク管理は、機能しないどころか人を傷つけることがあります。この記事がツールより考え方を先に置くのは、そういう理由です。
アイビー先生「6行のメモは、上司のためではなく、明日の自分のために書くものです」
基本はこの3つ(見える化・分解・ボール)
この記事で扱うのは、見える化・分解・ボールの3つです。順番のつけ方と完了の確認は、この3つが回り出してからで間に合います。
見える化 — 頭から出して、目に映す
最初の一歩は、抱えている仕事をぜんぶ書き出すことです。仕事とは呼びにくいもの(「あの件、返事しなきゃ」「例の書類どこだっけ」)も含めて、頭の外に出します。
冷蔵庫を思い浮かべてください。中身が見えない冷蔵庫では、同じ調味料を何度も買ってしまいます。頭の中も同じで、見えない仕事は二重に心配され、そのくせ実行はされません。書き出した瞬間、心配する仕事は「ただの一行」になります。
ゆあ「『あの件、どうなったっけ』みたいな、もやっとしたものも書いていいんですか?」
アイビー先生「いいんです。むしろ、そこから先に書いてください。『誰に、何を返事するのか』まで書ければ、それはもう普通の一行です」
分解 — 動ける大きさに割る
「企画書を作る」と書いたタスクには、たいてい手がつきません。大きすぎて、どこから触ればいいか分からないからです。「去年の企画書を開く」「構成だけ写す」のように、次の一手が想像できる大きさまで割るのが分解です。
分解にはもうひとつ、隠れた効用があります。大きな塊の中には「〇〇さんに確認」のような、相手がいないと進まない工程が埋まっていることがある。割ってみて初めて、それが期限の3日前に見つかります。当日に見つかると、間に合いません。
ゆあ「割り方が正しいのか、自信がないです」
ガント先生「最初は雑でいいんだよ。割ってみたあとの自分のほうが、その仕事にくわしくなっている。正しい割り方は、いつも一度割ったあとに見えるものだ」
ボール — いま、誰が持っているか
3つの中で、いちばん教わる機会がないのがこれです。
ボールとは、その仕事を次に動かせるのが誰なのかを指す言葉です。相手に見積もりを送って返事を待っているなら、ボールは相手にあります。返事が来て自分が対応する番なら、ボールは自分にあります。仕事が止まるときは、たいていこのボールの行方が曖昧になっています。「どっちが動く番か、お互いはっきりしないまま1週間」——キャッチボールで言えば、ボールが茂みに転がったまま、両方が相手の投球を待っている状態です。
自分のリストに「自分がボールを持っている仕事」と「相手の返事待ち」が混ざっていると、自分の忙しさを実際より重く見積もることになります。まず、この2つを分けて書く。それだけで景色が変わります。
ゆあ「私、ボールを茂みに転がしたまま『相手の返事待ちだから』って安心してました…」
ガント先生「工程表が止まるのは、作業の途中よりも、人から人へ渡る継ぎ目でね。そこを見ておくと、遅れに早く気づけるんだ」
今日から始めるなら、明日やる6つを書く
アイビー・リーが100年前に教えた手順は、今夜そのまま試せます。
- 仕事を終える前に、明日やることを6つだけ書く
- 重要な順に、1から6まで番号をつける
- 翌朝、1番から手をつける。終わるまで2番に移らない
- 終わらなかった分は、責めずに翌日の6つへ繰り越す
- これを毎日くり返す
必要なのは付箋1枚だけです。コツは「6つだけ」を守ることです。10個書けば、それはもう明日のリストではなく、ただの心配の一覧です。6つに絞る作業そのものが、優先順位の練習になっています。
慣れてきたら、6つのうち相手の返事待ちのものに印をつけてみてください。見える化と分解とボール、この記事の3つの基本が、付箋1枚の上でぜんぶ回り始めます。
アイビー先生「1番が終わらない日もあります。それでいいのです。いちばん大事なことに手をつけた日は、負けではありません」
ツールはいつ選べばいいのか
考え方が回り始めてからで十分です。そして、ツールは上等なものである必要はありません。
一人の仕事なら、紙・手帳・付箋で長く戦えます。数人のチームで同じリストを見たいなら、ExcelやスプレッドシートやToDoアプリが候補になります。人数が増え、社外の相手が絡み、「言った・言わない」が起き始めたら、そこで初めて専用ツールの出番です。境目の目安は、自分以外の誰かとボールをやり取りする回数だと考えてください。回数が増えるほど、継ぎ目を人の記憶で見張るのが難しくなります。
ちなみに筆者らは、このボールの継ぎ目を見張ることを専門にしたツール(agentpm)を作っています。ただ、それはこの記事の主題ではありません。付箋の6行で回るうちは、6行がいちばん強いツールです。
つまずき方は、人によって違う
ここまでが基本です。そして実際の現場では、つまずく場所が人によってはっきり違います。
大きな仕事が大きいまま止まる人。着手が期限の直前になる人。同時に抱えすぎて全部が遅れる人。頼んだはずの仕事が、誰の担当でもなくなって漂流する職場。私たちはタスクの詰まり方を8つの型と仕事量の負荷に分けて、型ごとに処方箋を用意しています。
たとえば「分解も優先順位もやったのに終わらない」なら、原因は1日の容量にある可能性が高い——その処方箋はマルチタスクが苦手な人の仕事術に書きました。相手からの提出物を追いかける立場なら、催促を仕組みに変える手順を資料回収の記事にまとめてあります。
自分の詰まりがどの型かを先に知りたい方は、無料のタスク滞留診断で確かめられます(担当者向けは13問・約3分、経営者・管理職向けは17問・約5分)。仕事が止まりやすい傾向を8つの型で示し、結果はメールの登録なしでその場で見られます。型ごとの詳しい解説と対処の記事は、メールを登録すると読めます。
よくある質問
Q. タスク管理とToDoリストは違うものですか。
ToDoリストは「やることの一覧」で、タスク管理の最初の1歩(見える化)にあたります。タスク管理はそこに、分解・順番・ボールの管理・完了の確認までを含みます。リストを作ったのに回らない場合、足りないのは、リストのあとに続く工程です。
Q. 会社で決められたツールが使いにくいのですが、変えるべきですか。
先に考え方を整えることをおすすめします。この記事の3つの基本と6行のメモは、どのツールの上でも(ツールの外の付箋でも)動きます。ツールの乗り換えは労力の割に、詰まりの原因が同じなら同じ場所で詰まります。
まとめ
タスク管理とは、仕事を見えるところに出し、動ける大きさに割り、ボールの持ち主をはっきりさせて、終わるまで運ぶ技術です。
100年前の6行のメモが、いまも通用するのは、仕事のツールが変わっても「人が約束を忘れ、塊の大きさにひるみ、ボールを茂みに転がす」ことは変わらないからです。
3週間前にアプリを閉じたあなたへ。もう一度開く必要はありません。まず、付箋に6行。アプリの話は、それからです。
