メインコンテンツへスキップ
TASK6プロジェクト管理基礎講座ガントとアイビー

プロジェクト管理とは?計画は「作る」より「直す」が本番

プロジェクト管理とは、期限があって複数の人が関わる仕事を、計画を立て、進み具合を見て、ずれたら直しながら終わりまで運ぶことです。会議で決まらない・承認で止まる・遅れの立て直しが追いつかない3つの急所と、今週からできる直し方を会話形式で解説します。

高橋ゆうこ

会議が終わる5分前、先方の部長がはじめて口を開いた。「この仕様、逆のほうがよくないか」。

担当者と積み上げてきた修正内容が、その一言で宙に浮く。どちらで進めるかは決まらないまま、「お時間なので」と散会になった。議事録にも、次回の予定にも、「決める」という文字はどこにもない。締切だけが、元の場所に残っている。


この記事は、プロジェクト管理をはじめて任された人のための入口です。ただし、計画の立て方だけでは終わりません。現場で計画が崩れるのは、たいてい「立てたあと」だからです。崩れる場所と、直し方までを扱います。

プロジェクト管理とは何か

プロジェクト管理とは、期限と関係者が決まっている仕事のかたまりを、計画に割り、進み具合を見張り、崩れたら直して、終わりまで運ぶ技術です。

タスク管理が「自分の手元の仕事を回す技術」だとすれば、プロジェクト管理は「複数の人の仕事と決めごとが絡む全体を運ぶ技術」です。自分ひとりの締切なら、遅れても謝る相手は自分だけで済みます。プロジェクトでは、ひとつの遅れが誰かの予定を壊します。この「他人と繋がった期限」を扱うのがプロジェクト管理です。

そして、この技術がいちばん効くのは、計画を作ったあとです。作った計画が現実とずれたとき、どう直すか。ここでつまずくと、計画表そのものが誰にも使われなくなります。

案内役

この連載の案内役は、ガントチャートを考案したガント先生、「明日やる6つ」を教えたアイビー先生、新米社員のゆあの3人です(くわしい人物紹介はタスク管理とはにあります)。

ガント先生

ガント先生

全体を見わたす係。ガントチャートの考案者

アイビー先生

アイビー先生

「明日やる6つ」を教えた実行の係

ゆあ

ゆあ

入社1年目の新米社員。今日も書類の山と格闘中

ガント先生ガント先生

「プロジェクトという言葉は大きく聞こえるがね、ほどいてみれば『誰が・いつまでに・何を』の束にすぎないよ」

アイビー先生アイビー先生

「今回も結論は単純です。決めて、書いて、追いかける。それだけです」

ゆあゆあ

「今日は、会議のあとに固まるやつの話ですね。心当たりしかないです」

計画どおりに進まない、3つの急所

この記事で扱うのは、計画を立てたあとに崩れやすい場所です。よくある3つに絞ります。

急所1: 「決まっていないこと」が、どこにも書かれていない

冒頭の会議には続きがあります。あれは受託開発の現場で実際にあった話で、担当者と事前にすり合わせた仕様を、会議に出てきた上司がひっくり返し、どちらで進めるか決まらないまま仕様の確定が遅れました。

このとき作業のリストは、ちゃんとありました。無かったのは「決める」の行です。作業だけを管理していると、「決まっていないこと」はどこにも記録されず、宙に浮きます。 決めるのも仕事です。期限と担当を付けて、リストに載せる対象です。

相手の会社の中で意見が割れている——これは、こちらには止められません。できるのは「御社内で確定をお願いします。◯日までに」と、決めるボールを相手にはっきり渡すことだけです。渡していないボールは、催促もできません。

ゆあゆあ

「決めるのは相手なのに、こちらのリストに書くんですか?」

アイビー先生アイビー先生

「書くのです。『決まるのを待つ』と『決めてほしいと頼み、期日に確かめる』は、別の仕事ですから」

急所2: 承認と確認の「継ぎ目」で止まる

作業は誰かが必ずやっています。それでも全体が止まるのは、たいてい仕事と仕事の継ぎ目です。上司の確認待ちや、先方のレビュー待ち、承認のハンコ。どれも作業ではないので、工程表の横棒には描かれず、そのぶん見張りから漏れます。

誰の手元にボールがあるのかを、継ぎ目ごとにはっきりさせる。タスク管理とはの記事で書いた「ボール」の考え方は、人数が増えるほど効いてきます。

ガント先生ガント先生

「私が描いた横棒には、待っている時間が写らないんだ。だから隙間は、自分で数えるしかない」

急所3: 遅延の「立て直し」が、誰の仕事でもない

ひとつのタスクが遅れると、玉突きで全体がずれます。このとき発生するのが、後ろのタスクの並べ直し、関係者への連絡、アポイントの取り直しといった調整作業です。ところがこの作業、どの計画にも見積もられていません。誰の担当でもないからです。

だから立て直しは後回しにされ、期日が現実と合わなくなった計画表がそのまま残ります。合っていない表は、やがて誰も見なくなります。計画表は作った翌日から少しずつ現実とずれていくので、直しを入れ続けているあいだだけ、役に立ちます。

ゆあゆあ

「遅れたのは1個なのに、直すのは全部なんですね…」

ガント先生ガント先生

「そう。しかも直す作業には相手がいる。アポの取り直しは、こちらの都合だけでは動かせないからね。だから遅延に気づいたその日に、まず『直す時間』を取るんだ」

今週からできる手直し(ツールなし)

1. 「未決リスト」を1枚作る

議事録とは別に、「まだ決まっていないこと」だけを並べた一覧を作ります。各行に書くのは「何を・誰が・いつまでに決めるか」の3つ。決める人が相手側なら、頼んだ日と、確かめに行く日も書き添えます。期日までに決まらなかったら、仮でどちらに倒して進めるかをその行に足します——決まらないこと自体は、止まる理由になりません。

2. 会議は「宿題の読み上げ」で締める

散会の前に1分だけ、「誰が・何を・いつまでに」を声に出して確認します。読み上げてみて曖昧さが出たものは、その場で決めるか、未決リストに移します。冒頭の会議も、この1分があれば「仕様の確定は御社の部長に、金曜まで」の一行になっていたはずです。

3. 遅れが出たら、先に「直す時間」を取る

立て直しはそれ自体が仕事です。玉突きの並べ直しと関係者への連絡は、予定表に時間を確保してから取りかかります。ずれが自分の作業2〜3件で収まるなら大げさにする必要はありません。相手のいるタスクに玉突きが届いた瞬間から、立て直しは「今日の仕事」に昇格させてください。

新しく始めるのは1だけで構いません。未決リストが1枚あると、2の読み上げは自然に始まり、3の判断も速くなります。

アイビー先生アイビー先生

「未決リストは、私の6行のメモと同じ紙で構いませんよ。大事なのは、決めることに名前と期日が付いていることです」

ガントチャートとWBSは、何のためのツールか

ガントチャートは、期限の連鎖と継ぎ目を目に見えるようにする図です。WBSは、大きな塊を作業に割っていく技術です。どちらも計画を「作る」ツールとして紹介されますが、本当に効くのは「直す」場面です。1つの遅れがどこまで玉突きするのか、図があれば一目で分かり、無ければ頭の中で追うことになります。

紙に描いた横棒でも、この役目は十分に果たせます。人数が増え、社外の相手が絡み、継ぎ目の見張りが記憶で追いきれなくなったら、そこが専用ツールの出番です。筆者らが作っているツール(agentpm)も、この継ぎ目の見張りと期日前の確認を機械に任せるためのものです。ただ、未決リストはノートの見開きで今日から始められます。

つまずき方は、人によって違う

急所のどこで詰まるかは、現場によってはっきり分かれます。承認待ちで止まる組織もあれば、決めごとが漂流する組織もあり、そもそも1日の容量が溢れている人もいます。

手元の仕事の回し方から整えたい場合はタスク管理とはへ。分解も優先順位もやったのに終わらない場合はマルチタスクが苦手な人の仕事術へ。相手からの提出物待ちが慢性化しているなら資料回収の記事が処方箋です。

どこで詰まりやすいかは、無料のタスク滞留診断でも確かめられます。担当者向けが13問・約3分、経営者や管理職向けが17問・約5分です。結果は仕事が止まりやすい傾向を8つの型で示すもので、メールの登録なしでその場で見られます。型ごとの詳しい解説と対処の記事だけ、メールの登録が必要です。

タスク滞留診断を受けてみる

よくある質問

Q. タスク管理とプロジェクト管理、どちらから整えるべきですか。

自分の手元(タスク管理)からです。各自の手元が回っていないまま全体の計画表を作っても、表はすぐ現実と合わなくなります。手元の基本3つ(見える化・分解・ボール)を先に固めてください。

Q. 専任のPM(プロジェクトマネージャー)がいない小さな会社では、誰がやるのですか。

専任は要りません。未決リストと宿題の読み上げは、会議の司会が5分あればできます。「全体を見る人」を新しく置くより、「全体が見える紙」を1枚置くほうが先です。紙が回り始めてから、見る人を決めても遅くありません。

まとめ

プロジェクト管理とは、期限と関係者が絡む仕事の全体を、計画に割り、見張り、直しながら終わりまで運ぶ技術です。急所は3つ。決まっていないことを書く。継ぎ目を見張る。直す時間を先に取る。

次の会議の終わり5分前、「決まっていないことを読み上げます」と言ってみてください。あの部長の一言で宙に浮いた仕様も、担当と期日のついた一行に変わります。計画は、直され続けるかぎり、嘘になりません。